ILD(硬さ指数)とは何か?マットレスの硬さスペックを正しく読む方法

マットレス科学

マットレスのスペック表に「ILD25」「40N」などの数値が記載されていることがあります。これがフォームの硬さを表す指標です。しかしILDという数値は「硬さの一側面」を示すに過ぎず、単独では素材の性能を評価できません。ILDとは何か・どう測定されるか・何を示し何を示さないか・そして実際の選び方にどう使うかを解説します。

マットレス選びの全体像はマットレスの選び方完全ガイドをご覧ください。


ILDとは何か

ILD(Indentation Load Deflection)は、フォームの硬さを表す標準的な指標です。日本語では「圧縮硬さ」とも呼ばれます。単位はN(ニュートン)またはlbf(ポンド力)で表されます。

測定方法

ASTM D3574(米国材料試験協会規格)またはJIS K 6400(日本工業規格)に基づいて測定されます。

  1. 一定サイズ(通常50cm×50cm)の円形または正方形のプレートを使用
  2. フォームサンプルの厚みの25%まで押し込む
  3. その時点でかかっている力(N)をILD値とする

つまりILD25Nとは、「フォームを25%圧縮するのに25Nの力が必要」という意味です。数値が大きいほど硬い素材です。

日本の表示との対応

表示 硬さの目安 主な用途
〜100N未満 柔らかい 低反発コンフォートレイヤー
100〜150N 中程度 標準的なマットレス
150〜200N やや硬め 高反発・サポート層
200N以上 硬い サポートコア・高体重向け

※ILDの表示単位はメーカーによってN(ニュートン)・lbf・kgf等が混在しているため、単位を確認してから比較してください。


ILDが示すこと・示さないこと

ILDが示すこと

  • フォームを一定量圧縮するのに必要な力の大きさ
  • 製品間の相対的な硬さの比較(同じ測定規格・同じ素材の場合)
  • 購入時の初期の感触の参考値

ILDが示さないこと(重要)

  • 耐久性・寿命:ILDは密度とは独立した指標です。ILD150Nのフォームが必ずしも長持ちするわけではありません。寿命を決めるのは密度(kg/m³)です
  • 体圧分散の性能:ILDは静的な1点の硬さです。人体の複雑な形状への追従性・圧力分散の質はILDだけでは評価できません
  • 粘弾性の特性:低反発と高反発が同じILDでも、応力緩和の速さ・レジリエンスなどの特性は全く異なります
  • 温度変化後の硬さ:ILDは23°Cで測定されます。冬の寝室では低反発フォームの実際の硬さがILD値より大幅に高くなります
  • 使用後の硬さ:圧縮永久ひずみが蓄積すると実際の硬さはILD値から乖離します

ILDと密度の違い:最重要ポイント

ILD(硬さ)と密度(kg/m³)は独立した別のスペックです。

よくある誤解:「硬いマットレス=密度が高い=長持ちする」

正しい理解:硬さと密度は製造時に独立して調整できます。

  • 柔らかくて密度が高いフォーム:長持ちする(体圧分散◎・耐久性◎)
  • 硬くて密度が低いフォーム:早くへたる(初期は硬いが耐久性×)

購入時に「硬さスペックしか書いていないマットレス」は密度を意図的に非公開にしている可能性があります。両方のスペックを確認することを推奨します。密度と寿命の関係はマットレスの寿命は何年かをご覧ください。


素材ごとのILDの使い方の違い

ILDは同じ素材カテゴリー内での比較には有効ですが、異なる素材間の比較には注意が必要です。

低反発フォーム

ILD値が低い(柔らかい)ものが多い(10〜80N程度)。しかし粘弾性特性のため、測定時の速度・温度・時間によって実測値が変わりやすい。低反発フォームのILDは特に参考値として扱うべきです。

高反発フォーム

ILD値は幅広い範囲(80〜250N程度)。温度依存性が低いため、ILD値がより安定した指標になります。同じ高反発フォーム間での比較には有効です。

天然ラテックス

ラテックスの硬さ表示はILDではなくAsker C硬度や独自スケールを使うメーカーも多い。また非線形弾性(J字型応力-ひずみ曲線)のため、単一のILD値では特性を表しきれません。詳しくはラテックスとフォームの違いをご覧ください。


自分に合うILDの目安

体重と睡眠姿勢からILDの目安を判断できます。ただしこれは参考値であり、実際の体圧分散はマットレス全体の層構造によって決まります。

体重 睡眠姿勢 コンフォートレイヤーの目安ILD
50kg以下 横向き 60〜100N(柔らかめ)
50kg以下 仰向け 80〜120N(中程度)
50〜80kg 横向き 80〜120N(中程度)
50〜80kg 仰向け 100〜150N(中〜やや硬め)
80kg以上 横向き 100〜140N(中程度)
80kg以上 仰向け 130〜200N(やや硬め)

体圧分散と姿勢の関係については体圧分散の物理学、腰痛との関係は腰痛に硬いマットレスは本当にいいのかをご覧ください。


まとめ

ILDはフォームの硬さを示す有用な指標ですが、単独では素材の性能を評価できません。ILDが示さないこと——耐久性・体圧分散の質・温度変化後の硬さ・経年変化——を理解した上で使う必要があります。

最重要ポイント:ILDと密度は別物。硬さスペックだけでマットレスを選ぶと、初日は満足しても数年でへたる製品を選ぶリスクがあります。ILDと密度の両方を確認する習慣が、長期的に満足できる寝具選びにつながります。


関連記事


睡眠メカニックはクッション材の研究開発に5年以上携わった材料エンジニアです。Sleep Science Labでは「感覚的なレビュー」を材料科学で上書きすることを目指しています。

Comments

タイトルとURLをコピーしました